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M&A仲介の手数料は4つの項目でできている

仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に支払う費用は、支払うタイミングによって以下の4つに分かれます。会社によって仲介手数料の仕組みが異なり、以下項目の組み合わせが料金体系の違いに直結しています。
- 着手金:仲介会社やFAが業務を開始するための初期費用です。企業価値の算定、買い手候補のリストアップ、提案資料の作成といった準備作業への対価となります。
- リテイナーフィー(月額報酬):契約期間中の継続的な支援に対して毎月支払う報酬です。月額報酬の範囲内で、担当者は交渉の助言や進行管理などを行います。
- 中間金:買い手候補と基本合意に至った段階で支払う報酬です。相手先が決まり、交渉が一定の段階まで進んだことへの対価と位置づけられます。
- 成功報酬:M&Aが成立したときに支払う報酬です。成約して初めて発生するため、依頼する側と仲介会社の利害が一致しやすい仕組みといえます。
中小企業のM&Aでは、これらを合計した総額が譲渡金額の4〜10%程度になるのが一般的です。近年は着手金・中間金を取らない「完全成功報酬型」が主流になりつつありますが、その分、成功報酬の料率や最低報酬が高めに設定されていないかを確認する必要があります。
成功報酬の計算方法|レーマン方式とは
近年のM&A業界では、成功報酬の計算としてほとんどが「レーマン方式」を採用しています。取引金額を段階ごとに区切り、金額が大きい部分ほど低い料率を掛けて合計する方式です。一般的な料率は次の通りとなります。

たとえば取引金額が3億円の場合だと、3億円×5%=1,500万円。8億円なら、5億円×5%+3億円×4%=3,700万円となります。料率が「累進」ではなく「段階」で下がるため、金額が区分をまたいでも急に手数料が跳ね上がることはありません。ここまでは各社ほぼ共通ですが、料率をかける対象によって仲介手数料に差がつくことになります。
最大の落とし穴|「取引金額」の定義が4種類ある

同じレーマン方式・同じ料率でも、料率を掛ける「取引金額」の定義が会社によって異なります。主に4つの基準があり、借入金の多い飲食法人ほど差が大きくなります。
飲食法人の典型的な売却事例で比較してみましょう。株式譲渡価格3億円、有利子負債2億円、その他負債(買掛金・未払金・リース債務など)1億円の会社を売却すると仮定します。この場合、各算定基準に基づく金額ですが、①株価レーマンの場合 : 3億円×5%=1,500万円、③企業価値レーマンなら5億円×5%=2,500万円、④移動総資産レーマンなら6億円に対して5億円×5%+1億円×4%=2,900万円となります。②は①に対して一定の金額が加算されて算定されるため、算定方法について①と大きな違いはありません。ただ、①と④の間では、オーナーの手取り3億円に対して、2倍の差が生まれることになります。
飲食業は出店時の設備投資や店舗の敷金・保証金、厨房機器のリース債務で負債が膨らみやすく、コロナ期の融資が残っている会社も多いため、算定方法に依存した価格差が特に出やすくなります。必ず契約前に確認しましょう。
飲食店で起きやすい「最低報酬の罠」
多くの仲介会社は、レーマン方式で計算した額が一定額に満たない場合に適用する「最低報酬」を設けています。相場は500万〜2,500万円と幅があり、大手ほど高い傾向にあります。これが飲食業のM&Aで最も注意すべき点です。
たとえば1〜2店舗の飲食店を3,000万円で譲渡する場合、株価レーマンで計算した手数料は150万円ですが、最低報酬が1,000万円の会社に依頼すれば1,000万円を支払うことになり、手取りは2,000万円に減ります。最低報酬2,000万円の会社なら、譲渡価格の3分の2が手数料に消えます。売り手だけでなく買い手からも同額の手数料を取る仲介の場合、買い手はその負担を見越して譲渡価格を下げようとするため、売り手の手取りはさらに圧迫されます。
譲渡価格が数千万円規模の案件では、最低報酬が低い仲介会社、事業承継・引継ぎ支援センターや民間のマッチングプラットフォーム、あるいは飲食業に特化したアドバイザーを選ぶほうが合理的な場合が往々にしてあります。逆に、複数店舗・複数業態を持つ法人で譲渡価格が数億円になる案件では、最低報酬は問題にならず、算定基準とアドバイザーの実力のほうが重要になります。自社の想定譲渡価格帯によって、仲介業者として選択すべき最適なパートナーも変化します。
仲介とFAの違い|手数料だけでなく「誰の味方か」を確認する
M&A支援には、売り手と買い手の間に立つ「仲介」と、売り手または買い手の一方の代理人として動く「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」の2つの形態があります。

- 仲介:売り手・買い手双方と契約し、双方から手数料を受け取る。マッチングが早く、中小案件で主流。ただし買い手とは繰り返し取引する一方、売り手とは1回限りの関係になりやすいため、成約を優先して買い手寄りの条件になる利益相反リスクが指摘されている
- FA:片方の代理人として、価格や条件の交渉に専念する。手数料は依頼者からのみ。数億円以上の案件や、価格の最大化を最優先する場合に向く
中小企業庁の中小M&Aガイドラインでは、仲介が利益相反となり得ることを明記し、双方から手数料を取っている事実や買い手側の手数料の額を売り手に開示することを求めています。買い手の手数料が重ければ、その分だけ譲渡価格が押し下げられる可能性があるからです。仲介に依頼する場合でも、税理士や弁護士にセカンドオピニオンを求めることを妨げない契約になっているかを確認する必要があります。
2024年の中小M&Aガイドライン改訂で「契約前に確認できること」
中小企業庁は2024年8月に「中小M&Aガイドライン(第3版)」を公表し、M&A支援機関登録制度の登録要件を遵守するようM&A仲介業者に求めています。法律ではありませんが、違反すれば登録取消の対象になるため、実質的な拘束力を持ちます。売り手にとって重要なのは、次の項目を仲介契約・FA契約の前に書面で説明してもらえるようになった点です。
- 手数料の算定基準(株価か移動総資産か)、料率、最低報酬の額、着手金・中間金の有無と返金条件
- 買い手側からも手数料を受け取るか、その額はいくらか(仲介の場合)
- 専任条項の有無と期間。ガイドラインは専任契約の期間を最長でも6か月〜1年以内、中途解約の可否を明示することを目安としている
- テール条項(契約終了後に成約した場合も手数料を請求できる条項)の期間と範囲。目安は最長2〜3年以内、対象はその仲介会社が実際に紹介・関与した買い手候補に限定
- ネームクリア(買い手候補に社名を開示すること)は、原則として売り手の事前同意が必要
- セカンドオピニオンを求めることを妨げないこと
2026年度には「中小M&A資格試験」の創設も予定されており、業界の専門職化と手数料の透明化は今後も進む見通しです。契約書にこれらの説明がない、あるいは口頭でしか説明されない場合は、その会社がガイドラインを遵守しているか、登録支援機関のデータベースで確認する価値があります。
飲食業のオーナーが手数料を抑える4つの方法

以下の4点を意識するだけでも手数料を抑えられる可能性があります。
- 想定譲渡価格帯の把握
企業価値の目安を出してから仲介会社を探すことにより、最低報酬に見合う案件かどうかを判断できます。数千万円の案件に最低報酬2,000万円の会社を選ぶのは、最初から手取りを削る選択です。 - 算定基準が株価レーマンの会社を選択する
借入や店舗の敷金・リース債務が大きい飲食法人ほど効果が大きくなります。 - 複数社に見積もりを取り、手数料だけでなく飲食業の実績を比較する
営業許可の非承継、賃貸借の譲渡承諾、FC契約の扱いといった飲食固有の論点を理解していない仲介業者に委任した場合、価格交渉で買い手に押し込まれる可能性があります。 - 補助金の活用
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠では、仲介手数料やFA費用の一部が補助されます。年度ごとに要件や上限が変わるため、申請時期を仲介契約の前に確認しましょう。
まとめ|手数料は「率」ではなく「基準」と「最低額」で決まる
M&A仲介の手数料は、着手金・中間金・成功報酬の組み合わせで、成功報酬はレーマン方式(5億円以下5%〜100億円超1%)で計算されます。しかし実際の負担額を決めるのは料率ではなく、料率を掛ける基準が株価か移動総資産か、そして最低報酬がいくらかの2点です。飲食業は譲渡価格が数千万〜数億円と小さく、負債が膨らみやすいため、この2点の影響を最も受ける業種といえます。2024年のガイドライン改訂で、算定基準・最低報酬・買い手側手数料・専任条項・テール条項は契約前に書面で確認できるようになりました。まずは自社の企業価値の目安を把握し、その価格帯に合った支援先を選ぶことが、手取りを最大化する出発点です。弊社では、飲食業に特化した企業価値算定と、手数料体系を含めた売却プロセスの設計に関する個別面談を承っています。ご気軽にご相談ください。
★ 参考にしたURL
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/ma_guideline/005/003.pdf
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/ma_guideline/003/001.pdf
https://ma-shienkikan.go.jp/documents/MAGL2_kaisetsu.pdf
https://ma.kaipoke.biz/column/chusho-ma-guideline.html
https://mitsukijapan.com/ma/column/sme-ma-guidelines/
https://catalog.monex.co.jp/article/?p=55905
https://frontier-eyes.online/ma_guidelines/
https://careerladder.jp/blog/ma-kisei-kaikaku/
https://www.ma-cp.com/about-ma/ma-commission/
https://masouken.com/M&A%E3%81%AE%E6%89%8B%E6%95%B0%E6%96%99%E7%9B%B8%E5%A0%B4
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