編集モードをオンにし、編集したい文章・画像をクリックしてください。文字サイズは画面左下の表示設定から変更できます。

観光M&Aとは

観光M&Aとは、宿泊業、観光地の飲食業、旅行業(旅行会社・ランドオペレーター・体験事業)、観光施設(温浴施設・土産物店・道の駅・観光バス・遊覧船など)を対象とする事業の売却・買収・資本提携の総称です。

一般のM&Aと比較すると、資産としての評価対象が各事業によって大きく異なる点が特徴です。ホテル・旅館は不動産と温泉権を含む実質的な不動産M&A。飲食店は造作・営業権・料理人といった店舗単位の資産。旅行会社は不動産を持たず、旅行業登録・旅行業務取扱管理者・顧客基盤で価値が決まるアセットライトな事業です。同じ「観光業」にカテゴライズされていても、譲渡価格の桁も、買い手の事業者も異なります。この違いを理解したうえで、業種ごとに設計するのが観光M&Aの基本となります。

2026年が最も売り手にとって「都合の良い」2つの理由

一部では、2026年現在が売り手にとって最も良い時期であるとされています。その理由として、以下の2点が挙げられます。

図解:2026年が最も売り手にとって「都合の良い」2つの理由

① 訪日需要がすでにピークを迎えていること

2025年の訪日外客数は4,268万人と過去最高を更新しました。しかし2026年は様相が変わっています。日本政府観光局(JNTO)の推計では、2026年8月の訪日外客数は309万8,900人で前年同月比9.6%減、1〜8月累計は2,762万人で前年同期比2.7%減。中国市場が59%減と大きく落ち込む一方で、韓国・台湾・欧米など14市場で8月として過去最高を記録しています。つまり「全体が伸び続ける局面」は終わり、市場ごとに明暗が分かれる局面に入りました。M&Aの買い手は将来のキャッシュフローを買うため、右肩上がりの実績が続いているうちに売るのと、頭打ちが数字に出てから売るのとでは、評価が大きく変わります。

② 買い手側の購買力が過去最大水準となっていること

売り手にとって重要なのは、買い手が今どれだけ資金を持っているかです。CBREによると、2026年第1四半期の国内事業用不動産の投資額は2兆430億円と第1四半期として過去最大。ホテルは前年同期比33%増で、J-REITによる過去最大のホテル取得案件も成立しました。東京都心のホテルの期待NOI利回りは調査開始以来の最低水準を更新しており、これは投資家が高い価格を払ってでもホテルを買いたいことを意味します。飲食業でも、2026年は上場外食企業やファンドによる買収が相次ぎ、旅行業ではHISがインバウンド事業者を取得するなど、3業種すべてで買い手が活発です。

黒字オーナーが売却・一部売却を選ぶ6つの動機

「儲かっているのになぜ売るのか」。観光M&Aの現場で実際に多い動機を整理すると、次の6つに分かれます。

図解:黒字オーナーが売却・一部売却を選ぶ6つの動機

このうち①〜③は、会社そのものは手元に残したまま、事業や資産の一部だけを切り出す「一部売却」で実現できるものです。

①ポートフォリオ整理と②不採算部門の切り離しは、どちらも経営資源を主力事業に集中させるための売却です。違いは対象にあり、①は黒字でも中核ではない事業、②は会社全体の足を引っ張っている店舗や館を切り離します。③成長資本の獲得は、借入に頼らずに出店や改修の資金を確保する方法で、旅館であれば建物を売却して賃借に切り替えるセール&リースバックや、少数株主としての資本受け入れが代表例です。

一方、④〜⑥は経営権そのものを譲ることが前提になるため、一部売却では目的を果たせません。後継者不在の解消、自社株評価の上昇に伴う相続税負担への対応、市況の良い時期を捉えた売却は、いずれも会社全体を対象とするM&Aで検討することになります。

観光M&Aで失敗しないための3つの準備

図解:観光M&Aで失敗しないための3つの準備

観光M&Aを成功させるために、まずは以下の3つの点について意識しましょう。

  • 売却の12か月前から準備を始める
    店舗別・館別・部門別の損益を整備し、属人性を減らし、賃貸借契約や許認可の名義を整理する。準備が整った会社と、決算書しかない会社では評価が数千万円単位で変わります。
  • 「全部売る」以外の選択肢を先に検討する
    動機が前項の①〜③に該当する場合は、一部売却や資本提携で目的を達成できる可能性があります。会社ごと売るのは、選択肢を並べたうえで最後に決めることです。複数ある手法から、会社に合わせた最適な手法を選択できるよう、吟味しましょう。
  • 業績のピークが数字に表れている時に検討する
    2026年の訪日客数は前年割れが続いており、市場は選別局面に入りました。買い手の資金は過去最大規模で動いていますが、その評価は直近12か月の実績に基づきます。今後は訪日客数の減少に伴いM&Aの売却トレンドは下降傾向になる可能性も想定されます。タイミングを逃す前に、M&Aについて予め検討しておきましょう。

まとめ|観光M&Aは「追い込まれてから」ではなく「好調なうちに」

観光M&Aは、宿泊・飲食・旅行業を対象とし、業種ごとに資産の性質・価格の決まり方・許認可の扱いが異なるM&Aとなります。2026年の市場は、訪日需要が選別局面に入る一方で買い手の資金は過去最大規模で動いており、二極化の中で「追い込まれてから売る」会社が増えています。黒字のオーナーにとっての選択肢は、会社ごと売るか続けるかの二択ではなく、切り離す・分ける・資本を入れるという一部売却を含めた複数の道です。まずは自社の事業が、単体でいくらの価値を持つのかを把握することから始めてください。弊社では、観光業に特化した企業価値算定と、一部売却・資本提携を含むスキーム設計に関する個別面談を承っています。ご気軽にご相談ください。

ご相談はこちらから

★ 参考にしたURL

https://www.jnto.go.jp/news/press/20260916_montly.html

https://yamatogokoro.jp/inbound_data/61261

https://www.travelvoice.jp/20260916-160529

https://www.cbre.co.jp/insights/figures/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC-2026%E5%B9%B4%E7%AC%AC1%E5%9B%9B%E5%8D%8A%E6%9C%9F

https://nfm.nikkeibp.co.jp/atcl/plus/21/00008/03332/

https://hotelbank.jp/investment/cbre-caprate-2026q1-tokyo-kyoto-osaka-fukuoka/

https://www.vmi.co.jp/jpn/consulting/seminar/2025/05/japan_hotel_investment_market_size_vmi.pdf

https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260206-hotel25y/

https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260330-ryokanhotel/

https://forbesjapan.com/articles/detail/91887

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203231_1527.html

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201872_1527.html

https://hotelbank.jp/industry-trends/ryokan-succession-crisis-2026-data/

https://hotelbank.jp/industry-trends/hotel-ryokan-bankruptcy-2026-h2-acceleration/