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旅行業の「登録を持つ会社」は売ることが可能

旅行業法には、登録の承継に関する規定がありません。そのため、旅行業を対象とした事業譲渡や、旅行業者を消滅会社とする合併では、事業を引き継ぐ側があらかじめ、または承継後に新たに旅行業の登録を受ける必要があります。
しかし、株式譲渡であれば実質的に登録の承継が可能になります。株式譲渡は会社の株主が入れ替わるだけで法人格は変わらないため、その会社が持つ旅行業登録はそのまま維持されます。つまり「登録を売る」ことはできなくても、「登録を持つ会社を売る」ことはできるのです。
つまり、登録を引き継ぎたい場合は株式譲渡の手段は必須となります。事業譲渡や会社分割を選ぶ場合は、買い手側の新規登録と営業保証金の承継届出を見越す必要があります。
そのほかに留意するポイントは、以下の表の通りです。旅行業のM&Aでは、登録そのものの扱いに加えて、営業保証金をどう引き継ぐか、どの届出がいつまでに必要かが、手段ごとに異なります。

表に記載されている通り、手続きの負担がもっとも小さいのは株式譲渡です。登録も営業保証金もそのまま維持されるため、必要なのは役員変更などに伴う登録事項変更届にとどまります。ただし、旅行業務取扱管理者が譲渡を機に退職する場合は後任の選任が欠かせません。管理者が不在の営業所では旅行業務を行えないため、キーパーソンの残留は契約前に確認しておきたい点となります。
一方、事業譲渡や会社分割では登録が承継されないため、スケジュールの組み方が成否を分けます。買い手の登録取得が譲渡日に間に合わなければ、その間は営業ができず、予約済みの顧客や取引先にも影響が及びます。営業保証金は旅行業法第16条の承継届出によって引き継げますが、期限のある手続きです。買い手の登録申請を先行させ、譲渡日から逆算して準備を進めることが重要です。
第1種・第2種登録の「価値」はどこから生まれるのか
登録は単なる許可証ではなく、取得するために財産要件と人的要件をクリアした「証明書」として扱われます。当然ながら新規参入者にとって取得のハードルが高いほど、既に持っている会社の価値は高くなります。以下は種類ごとの要件表です。

第1種は観光庁長官登録で、基準資産3,000万円と営業保証金7,000万円(旅行業協会に加入すれば分担金1,400万円)が必要となります。基準資産額は「資産の総額−負債の総額−不良債権等−営業保証金(分担金)の額」で計算されるため、仮に分担金1,400万円を納める会社の場合、それを差し引いてなお3,000万円の純資産が残っていなければなりません。加えて、営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任し、海外旅行を扱う営業所には総合旅行業務取扱管理者が必要となります。
この要件のハードルの高さが需要を生んでいる大きな理由です。インバウンド需要を取り込みたい異業種、海外募集型ツアーに参入したい第2種業者、人材不足で管理者を確保できない事業者にとって、第1種登録を持つ会社を買うことは「資本要件・人材・実績・協会の会員資格を一度に手に入れる」ことを意味するからです。M&Aでいう「時間を買う」が、旅行業ではそのまま「登録を買う」に置き換わります。
具体的に、買い手が登録と一緒に評価するのは次の要素です。
- 旅行業務取扱管理者
資格者が複数在籍し、年齢構成が若いほど評価が上がります。管理者が1人で高齢の場合、買い手はその人の残留を契約条件にします。 - 年間取引額の実績
営業保証金の額は前年の取引額で決まるため、実績はそのまま「どの規模の営業ができる会社か」の証明にすることができます。 - 航空券・宿泊・地上手配の取引契約。航空会社との精算体制、ホテルとの仕入契約、海外のランドオペレーターとの関係は、登録がなければ結べないものです
登録を活かして旅行会社を高く売却するための準備
登録を持つ会社を売却するときに、以下のポイントを抑えると高く売却できる可能性が高くなります。
- 旅行業務取扱管理者の確保と残留条件の整理
管理者が退職すれば営業することが不可能になるため、本項目は買い手にとってとても重要な要素になります。複数人の選任、または後任候補の育成を売却前に済ませておくと評価が高くなります。 - 基準資産額の確保
買い手は登録更新(5年ごと)のリスクを測るため、役員貸付や不良債権を整理し、基準資産の計算根拠を示せるようにしておくことが安全です。 - 取引額報告書と前受金の管理
年1回の取引額報告と、旅行者からの前受金の管理状況は、デューデリジェンスの必須項目となります。必ず押さえておきましょう。 - 株式譲渡を基本とした設計
前述の通り、登録を維持したまま引き継げる株式譲渡が原則となります。簿外債務を懸念する買い手には表明保証で対応し、事業譲渡を選ぶ場合は買い手の新規登録と営業保証金の承継届出を並行して進めることが重要です。
着手から成約までの目安は6〜9か月です。登録の有効期間(5年)の満了が近い場合は、更新手続きと売却の時期が重ならないよう調整しておくことも評価の上昇につながります。
まとめ
結論として、旅行業の登録は法律上譲渡できませんが、株式譲渡なら登録を維持したまま会社を引き継ぐことが可能です。第1種・第2種の登録は、基準資産・営業保証金・管理者という参入障壁を越えた証明であり、インバウンド需要を取り込みたい買い手にとっては「時間を買う」対象となります。管理者の高齢化やコロナ債務で先が見えないと感じている旅行会社ほど、返納の前に「この登録を欲しがる買い手がいるか」を確認する価値があります。弊社では、旅行業登録を含めた企業価値算定と、スキーム設計・買い手候補に関する個別面談を承っています。ご気軽にご相談ください。
★ 参考にしたURL
https://www.ushijima-law.gr.jp/topics/20241122travelagent/
https://www.shigyo.co.jp/search_post/travel-accommodation/ryokou/ryokou_ma/
https://kankou.tla-admin-office.com/ryokougyou/jigyoushoukei_ma/
https://kankou.tla-admin-office.com/ryokougyou/kyushubunkatsu_jigyoushoukei/
https://www.ma-cp.com/about-ma/permit-transfer-manda/
https://www.pref.aichi.jp/site/ryokougyouhou/kanko-menu-ryokou-shinki-2-3.html
https://www.pref.aichi.jp/site/ryokougyouhou/kanko-menu-ryokou-aramashi.html
https://www.pref.kyoto.jp/kanko/ryokougyou.html
https://www.pref.shiga.lg.jp/sa00/6692.html
https://www.pref.osaka.lg.jp/menkyo/o070070/0021523/0025269.html