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旅行業登録の扱いと譲渡方法の関連性

旅行業法には、登録を第三者に承継させる規定がありません。登録はあくまで「その法人(または個人)」に対して与えられたものであり、財産とはみなされません。そのため、法人格が維持される形式での承継では登録が残り、法人格が変わる・事業だけが動くスキームでは登録が移らず、引き継ぐ側が新たに登録を受ける必要があります。旅行業法には、以下の2つの手続きが存在しています。

図解:旅行業登録の扱いと譲渡方法の関連性(1)

・登録事項変更届(届出)
商号、代表者、役員、主たる営業所の所在地、営業所の名称、旅行業務取扱管理者などに変更があったとき、変更の日から30日以内に登録行政庁へ届け出るもの。

図解:旅行業登録の扱いと譲渡方法の関連性(2)

・変更登録(申請):第3種から第2種へ、第2種から第1種へなど、登録の種別(業務範囲)そのものを変えるときに行う申請。審査があり、新しい種別の基準資産と営業保証金を満たす必要があります。

株式譲渡:登録は維持される。必要なのは「30日以内の変更届」

株式譲渡は、会社の株主が売り手から買い手に入れ替わる取引です。会社そのものは何も変わらないため、旅行業登録・登録番号・旅行業協会の会員資格・営業保証金(または弁済業務保証金分担金)はすべてそのまま残ります。
一方、代表者や役員が交代した場合、登録情報の変更に伴い変更日から30日以内に登録事項変更届を提出する必要があります。第1種旅行業者は主たる営業所を管轄する運輸局等へ、第2種以下は都道府県へ届け出ることとなります。届出には役員変更後の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)が必要なので、法務局での役員変更登記を先に完了させておく必要があります。登記に時間がかかって30日を過ぎると、登録行政庁によっては理由書の提出を求められる場合があります。

加えて、以下の点に留意しておくと万全です。

  • 新しい役員の欠格事由
    買い手側が選任した役員が旅行業法第6条の登録拒否事由(過去の登録取消、禁錮以上の刑など)に該当すると、登録の取消事由になるので気をつけましょう。
  • 旅行業務取扱管理者の退職
    オーナー自身が管理者を兼ねている会社では、株式譲渡と同時にオーナーが退任すると管理者が不在になるため、後任の選任と30日以内の変更届が必須となります。
  • 商号変更・本店移転
    買い手のグループ名に合わせて商号を変える、本店を買い手の所在地に移す、といった変更も登録事項となります。

買い手の「新規登録」と「6か月ルール」

事業譲渡は、会社が持つ資産・契約・従業員を個別に選んで譲渡する取引です。旅行業の事業を譲渡しても、登録は売り手の法人に残ったままで、買い手には移りません。買い手が旅行業を続けるには、譲渡日までに自ら旅行業登録を受けておく必要があります。

新規登録の審査には通常1〜2か月程度かかり、基準資産の証明、営業保証金の供託(または旅行業協会への加入と分担金の納付)、旅行業務取扱管理者の選任が必要です。この準備が間に合わないまま譲渡日を迎えると、買い手は無登録営業になってしまうため、譲渡日は「買い手の登録日以降」に必ず設定する必要があります。

なお、旅館業では2023年の法改正で、事業譲渡の際に都道府県知事等の承認を受ければ許可を引き継げる制度が新設されました。また中小企業等経営強化法の経営力向上計画にも、事業譲渡で許認可を承継できる特例があります。しかし、この特例の対象業種は一部に限られ、旅行業は含まれていないため、登録の再取得が必要であると言う認識は必ず持ちましょう。

承継手法別の比較表

以下は、事業承継に関する手法とそれに伴う相違点について整理した表となります。

図解:承継手法別の比較表

登録の引き継ぎ単体で見た時には株式譲渡が圧倒的に簡単ですが、株式譲渡は会社の簿外債務や過去の取引リスクも丸ごと引き継ぐ取となる点が大きな懸念点となります。実際に買い手がそれを嫌って事業譲渡を希望するケースは珍しくありません。その場合は、上記の新規登録・6か月ルール・契約の再締結をスケジュールに織り込むことが、売り手側にも求められます。

会社分割・合併で登録を引き継ぐなら

旅行会社の一部門(インバウンド部門、BTM部門、教育旅行部門など)を切り出して売却する場合、会社分割が使われるケースがあります。会社分割でも登録は承継されないため、分割承継会社は効力発生日までに新規登録を受けなければなりません。承継会社がすでに旅行業登録を持っている場合は、承継する事業の業務範囲が現在の登録種別に収まっているかを確認します。たとえば第3種の会社が、第2種業者の国内募集型企画旅行事業を承継するなら、効力発生日までに第2種への変更登録が必要です。効力発生日以降には、承継会社が登録事項変更届を、分割会社が事業分割承継届出書を提出します。

合併の場合も同じ構造です。存続会社に登録がなければ新規登録、消滅会社の登録は法人消滅届出書で抹消されます。グループ内の再編で、消滅会社が積んでいた営業保証金を存続会社で使い回したい場合は、第16条の承継届出を使います。

M&Aのスケジュールに登録手続きを組み込む

以下は事業譲渡型のスケジュールの一例です。これを参考にして、事業譲渡後の具体的なスケジュール設計を行いましょう。

図解:M&Aのスケジュールに登録手続きを組み込む

まとめ

旅行業登録は法人に紐づくため、株式譲渡なら維持され、事業譲渡・会社分割・合併では引き継ぐ側の新規登録が必要です。株式譲渡で必要なのは30日以内の登録事項変更届と管理者の確保。事業譲渡では買い手の登録取得を譲渡日より先に済ませ、全部譲渡なら第16条で営業保証金を引き継ぐ、というタイトなスケジュール感で進める必要があります。スキームの選択は税務や簿外債務の観点でも決まりますが、旅行業では登録の扱いを最初に確認しなければ、後からスキームを変更する羽目になります。弊社では、旅行業登録・管理者・営業保証金の扱いを含めたスキーム設計と、企業価値算定に関する個別面談を承っています。ご気軽にご相談ください。

★ 参考にしたURL

https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/faq/ryokougyou/answer.html

https://www.jata-net.or.jp/membership/member-information/membership01_02/page-2296/

https://www.pref.osaka.lg.jp/menkyo/o070070/0021523/0025264.html

https://www.pref.osaka.lg.jp/menkyo/o070070/0021523/0025266.html

https://www.pref.okinawa.lg.jp/shigoto/kankotokusan/1011671/1011696/1011701/1011721.html

https://www.pref.kyoto.jp/kanko/ryokougyoutourokujikouhenkou.html

https://ryokou.sgm-web.jp/daihyou-henkou/

https://ryokou.sgm-web.jp/kanrisha-henkou_todoke/

http://www.officeogawa.jp/article/13184033.html

https://kokuryoguide.hatenablog.com/entry/kako-r03-hr0105

https://igunal.com/management-plan-permit-succession-special-provision/